ケロイド・肥厚性瘢痕
ケロイドや肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)は、ケガや手術、ピアス、ニキビ、虫刺されなどのあとに、皮膚が過剰に反応して盛り上がる状態を指します。見た目の問題だけでなく、痛み・かゆみ・つっぱり感などの不快な症状を伴うこともあり、放置するとさらに拡大してしまうことがあります。当院では、体質や原因を考慮しながら、再発防止を重視した多角的治療(切除・注射・圧迫・放射線療法など)を行っています。
ケロイド・肥厚性瘢痕とは
皮膚は損傷を受けると、自然治癒の過程でコラーゲンなどの線維が生成されて修復されます。しかし、この修復反応が過剰に働くと、必要以上に線維組織が増殖し、皮膚表面が盛り上がります。これが「肥厚性瘢痕」や「ケロイド」と呼ばれる状態です。どちらも似ていますが、厳密には異なる性質を持っています。
肥厚性瘢痕とケロイドの違い
両者は外見が似ているため混同されやすいですが、以下のような違いがあります。
| 分類 | 特徴 | 広がり方 | 症状 |
|---|---|---|---|
| 肥厚性瘢痕 | 傷の範囲内で盛り上がる。時間の経過とともに平坦化する傾向。 | 元の傷の範囲内に限局 | 赤み・かゆみ・軽い痛み |
| ケロイド | 傷の範囲を超えて広がり、硬く・赤く・光沢を伴う。 | 周囲の正常皮膚まで拡大 | 強い痛み・かゆみ・つっぱり感を伴うことが多い |
ケロイド・肥厚性瘢痕ができる原因
これらの疾患は「体質」と「外的刺激」の両方が関係します。次のような要因が重なることで発生しやすくなります。
- 遺伝的体質(家族にケロイド体質の方がいる)
- 皮膚の緊張が強い部位(胸・肩・耳・顎下など)
- 過剰な縫合張力や感染
- ピアス・外傷・手術創・ニキビ跡
- ホルモンバランスやストレスの影響
特に胸部・肩・上腕・耳たぶなどは皮膚張力が強く、ケロイドが発生しやすい「好発部位」として知られています。
形成外科での治療方針
ケロイドや肥厚性瘢痕の治療は、単一の方法では不十分なことが多く、「再発防止」を目的に複数の治療法を組み合わせるのが基本です。形成外科では、外科的切除と内科的治療を組み合わせて、根本的かつ長期的な改善を目指します。
治療の考え方
形成外科での治療では、以下の3つの柱を重視しています。
- ① 過剰な線維増殖を抑制する(炎症のコントロール)
- ② 皮膚の張力を軽減し、再発を防ぐ
- ③ 美容的にも自然な皮膚に近づける
主な治療法
当院では、症状の程度や体質に合わせて、以下の治療を組み合わせて行います。
1. ステロイド注射(トリアムシノロン)
炎症を抑え、線維芽細胞の増殖を抑制する目的で行います。数週間〜1か月ごとに数回注射を行うことで、赤み・硬さ・かゆみの改善が期待できます。小さな肥厚性瘢痕に対しては単独でも有効です。
2. 圧迫療法・テーピング療法
ケロイドの部位に一定の圧力をかけることで、血流を抑制し、線維増殖を防ぎます。シリコンゲルシートや専用の圧迫ピアス・バンドを使用します。特に耳のケロイドには有効な方法です。
3. 外用療法
ステロイド軟膏やシリコンゲル外用を用い、炎症とコラーゲン産生を抑えます。小規模の肥厚性瘢痕に対しては、自宅でのケアとして有効です。
4. 外科的切除
大きなケロイドや瘢痕は、外科的に切除することで根本治療を行います。ただし、切除単独では再発リスクが高いため、術後に放射線治療やステロイド注射を併用します。形成外科では、皮膚割線に沿った切開と層状縫合によって、目立ちにくい仕上がりを実現します。
5. 放射線療法(術後照射)
ケロイド切除後の再発を防ぐため、術後数日以内に低線量の放射線を照射します。線維芽細胞の過剰な増殖を抑制する効果があり、再発率を大幅に低下させます。形成外科と放射線科が連携して行う安全な治療です。
6. 再生療法(PRP療法・エクソソーム療法)
近年では、自己血液から抽出した成長因子を注入する「PRP療法」や、細胞間情報伝達を利用する「エクソソーム療法」なども併用されます。皮膚の修復力を高め、正常な組織再生を促すことで、より自然な治癒をサポートします。
治療の流れ
ケロイド・肥厚性瘢痕の治療は、段階的かつ計画的に進めます。
- 初診・診断:形状・部位・経過を診察し、治療方針を決定
- 炎症期のコントロール:ステロイド注射・外用療法を中心に実施
- 必要に応じて切除術+放射線療法
- 圧迫・テーピングなどの再発予防ケア
- 定期的な経過観察と再注射・調整
術後のケアと再発防止
ケロイドや肥厚性瘢痕は「再発しやすい疾患」であるため、治療後のケアが非常に重要です。形成外科では、治療後も数か月〜1年単位で経過観察を行います。
- 術後数か月間はテーピングまたは圧迫具を継続使用
- 紫外線を避け、色素沈着を防ぐ
- マッサージや刺激を控える
- 赤み・硬さが再出現した場合は早期に再注射を行う
保険適用について
ケロイド・肥厚性瘢痕の治療は、機能障害や疼痛を伴うため、医学的治療として健康保険が適用されます。美容目的ではなく、医療的必要性がある場合(例:手術痕・ピアス後ケロイドなど)は保険診療の対象です。放射線療法や再生療法の一部は自費診療となる場合があります。
よくある質問(Q&A)
Q. ケロイドは完全に治りますか?
A. 完全に「再発ゼロ」にすることは難しいですが、形成外科で適切な治療と術後管理を行うことで、長期間安定した状態を保つことが可能です。
Q. どのくらいの期間で治療が終わりますか?
A. 軽症例では数か月で改善しますが、重症ケロイドでは6か月〜1年程度の経過観察が必要です。症状に応じて注射や圧迫を継続します。
Q. 手術後にまた同じ場所が盛り上がることはありますか?
A. 再発する可能性はあります。そのため、切除だけで終わらせず、放射線治療・注射・圧迫などを組み合わせることが重要です。
Q. 自分がケロイド体質かどうか分かりません。
A. 傷が治ったあとに赤く盛り上がりやすい、ピアス穴がふさがって硬くなったなどの経験がある場合は、ケロイド体質の可能性があります。医師が体質を判断し、予防法を提案します。
まとめ
ケロイドや肥厚性瘢痕は、一度できると自然に治ることが難しく、再発を繰り返すことも少なくありません。しかし、形成外科での適切な治療と継続的なケアによって、見た目と症状の両方を大きく改善することが可能です。当院では、再発を防ぐための包括的な治療計画と、体質に合わせたケアを行っています。しつこい赤みや盛り上がりでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
帝王切開後などの痛痒い隆起した赤い傷あとの治療をしています。主にステロイドの局所注射、ステロイドテープなどをお勧めしています。
